大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)1041号 判決 1953年9月11日

主文

本件上告及び附帯上告を棄却する。

上告費用は上告人等の負担とする。

附帯上告費用は附帯上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士橋本三郎の上告理由第一点について

論旨は控訴審においては訴の変更は許されないと主張する。しかし控訴審には民訴三七八条によつて別段の定ある場合を除くの外第一審の手続が準用されており、訴の変更については控訴審において別段の規定がないから民訴二三二条の規定は控訴審にも準用があり従つて当事者は控訴審においても右二三二条の要件に合する限り訴の変更をなし得るものと解するを相当とする。本件において被上告人は第一審において第一次の請求原因としては本件建物の所有権に基いて上告組合の不法占拠を理由とし、第二次の請求原因としては本件建物に関する被上告人と上告組合との賃貸借契約が期間の満了により終了したことを原因としていたところ、原審にいたつて従前の請求原因を全部撤回して新に上告組合が本件建物の賃借権を無断で上告人吉村猪三郎に譲渡したことを理由としての契約の解除を原因として主張するものである。そして被上告人が本件建物の賃貸借契約の終了を原因としてその返還を求める点においては第一審と原審との間に何等変りはないのであるから、被上告人の右訴の変更は請求の基礎には変更がないものと認められるのである。又原審は右訴の変更により著しく訴訟手続を遅滞させるものではないと認めたのであるから原審が右訴の変更は適法であると判定したことは正当である。また論旨は控訴審で訴の変更を許すことは憲法三二条に違反するものであると主張する。しかし控訴審で訴の変更を許すことが憲法三二条に違反しないことは昭和二三年(れ)第一八八号、同年七月八日大法廷判決(集二巻八号、八〇一頁)の趣旨に照して明らかであるから論旨は採用できない。

同第二点について

所論は原審における証拠の取捨判断及び事実の認定を争うに帰するから上告適法の理由にあたらない。

同第三点について

しかし原審は証拠により本件賃貸借契約には賃借人が無断で賃借物の全部又は一部を他に転貸し又は賃借権を譲渡したときは賃貸人は催告を要しないで契約を解除し得る特約のあつたことを認定しているであつて右の認定は何等実験則に反するものではない。従つて原判決には所論のような違法はない。

附帯上告代理人弁護士小川契貮の上告理由について

所論は最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当しない。また法令の解釈に関する重要な主張を含むものとは認められない。

よつて民訴四〇一条、八九条、九五条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例